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狂鶯 【kyou-ou】

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□ 雨降りやまず □

雨降りやまず その一

その一




活動が認められ部費もほんのわずかだが出るようになった。
部員が二人しかいない学園で一番弱小の部が認められ事になった経緯には、生徒会会長へ生徒会副会長が一ヶ月言いなりだった伝説のお祭りイベントがあるのだが、ピザ部の副部長も兼ねる同人物にとって人生最悪の暗黒の歴史として記憶の闇に葬っていた。
その学園で一番小さな調理室はイベント専用に増築された建物の一つで倉庫に繋がっている。
学園の木々が茂る外縁に近いから夏は虫が入ってくるし、冬には間仕切りの壁があるにせよ倉庫から寒い風が遠慮なく吹いて外気温と変わらない。
梅雨も終わり夏前の比較的過ごしやすい季節とは言え、外の天気の影響をモロに受けてしまう、何よりナナリーの車椅子が目の前の林に続く雨の日にはぬかるむからでこぼこ道に乗り入れが難しいことが一番に不便だ。そこをあてがわれたことにルルーシュはとても不満であった。


「しかし、会長もこんな辺鄙なところをあてがわなくても、調理準備室とか適当な大きさの部屋ならいくらでもあるはずなんだが…なんのために俺があんなことまで、チッ」
自分の努力が予想よりも報われなかったと言うわけだ。
「まあ、他のクラブへの世間体もあるんだろう、何よりここはクラブハウスに近いじゃないか」
「ああ、そうだな、お前が寝てても大判ピザが熱いままベッドまで届くわけだ」
「おールルーシュ!それはいい考えだ、では早速『それはダメだ』マンゴーソースのピザ!」
「だいたい予算が少なすぎるっ、チョリソとパラペーニョピザだって10枚焼けるかどうかだ!それなのにクラブ活動以外に焼いてみろすぐ活動休止だ!」
「それはお前がスペイン産の希少価値のイベリコ豚のチョリソを使おうとするからだろう?メキシコ産の辛くて安いものを使えばもっと焼けるじゃないか」
「それは俺のプライドが許さない、何よりそれでお前が満足するとは思えないがな!」
「うっ…それは…」
「辛くはないが上品質のチョリソを使い、辛味は空輸した新鮮なパラペーニョで補完する、完璧だ!」
たしかに噛めば芳醇な味のするそれを使えば完璧だろう、だがそれ以外にも最高級品を取り揃えているピザ部の予算は既に超えていてランペルージ家の家計簿から持ち出ししてしまっている。


ルルーシュ特製新作ピザが焼けるまでの間、二人はいつもピザ部の会長と副会長として会話をし(と言ってもいつもの会話とほとんど変わらないが)、乗る気ではなかったはずのルルーシュがいつの間にか至高のピザを求め世界の食材を部室と倉庫に集めていた。その上にルルーシュはC.C.目当てに入部希望の男子生徒を全員断り続けている。無自覚の所有欲と余計なものなど何一ついらないところは相変わらずである。
一方、女子生徒は自分達より遥かに料理が完璧な憧れのルルーシュと、神秘的でルルーシュとどこまで関係が進んでるのかイマイチつかめない毒舌美少女C.C.の間に挟まれるなど精神が耐え切れないと判断され、入部希望者は初めからゼロであった。
特に会長ミレイに何かとからかわれるシャーリーの焦燥感は人一倍であった。
しかしC.C.が入学した経緯からピザ部創立に至るまで全てにおいてルルーシュが関わっているとなると一歩も前に進めないのだった。


「ナナリーが羨ましがっていたぞ、お兄様ばかり熱々のピザをお召し上がりになってと、たまには持って行って一緒に食べないか」
「それなら問題ない、ピザよりも健康的な食事を作っている。何よりナナリーには高カロリー過ぎてそんなに食べさせられないからな」
「それはそうだが…」
「なんだ?問題でもあるのか?」
「…いいや、別に…雨は止まないな、これじゃ帰る時にずぶ濡れだ」
「ああ、止みそうにないな」
ナナリーは本当はピザが食べたいんじゃなくてここで兄を独占している私に羨望のまなざしを向けているんだ…と言いかけたがC.C.は他に話を振った。言えばこれはピザ部の活動なんだからお前は気にすることはないと逆に説教されてしまうのが目に見えていたからだ。ナナリーのその気持ちは嫉妬と言うものではないだろうが羨ましさと寂しさを感じているのは確かだ。しかし素直になれないもどかしい兄と妹のこの距離に誰も入り込むことは出来ない。例えそれが母マリアンヌであろうとも…とここまで考えて自分にはそれらが一度でも存在していない事に気付く、本当の家族、血縁、友達、何一つ自分は記憶や経験がなくまともに手に入れたことはない。胸に落ちる寂寥が深くえぐりそこで考えるのをやめた。無意味な記憶の更新だけが続く自分の傷口を今更広げたところで意味はないのだから…節目がちに暫しの沈黙の後、C.C.は顔を上げ目を輝かせた。大きな特製オーブンの中から鼻腔をくすぐる香ばしいニオイがしてきたからだ。
今日一日で最大のお楽しみタイムにC.C.は喜びを隠さずテーブル前に着席した。


選びぬかれた世界のチーズをブレンドし、これまた厳選した食材の19インチ(約48cm)のピザをルルーシュと二人とは言えほぼ自分独りで平らげたC.C.はもう動けないと言ったきり備品のカウチソファーで脱力したままだ。
それを当然と片づけを終わらせたルルーシュはグラスを手に戻ってきた。
グラスには既にルビー色の鮮やかな液体が注がれている。
テーブルに置かれたボトルを見ると黒い鶏の紋章のラベルが貼られていた…キャンティ・クラシコと言われるそれは大量生産の赤ワインであるキャンティの中でも良質なワインと認められたものだけが貼れるラベルであるが、質の割に低価格帯で学生でも買える値段でもある…どのようなワインなのか一瞥で認識するとグラスを受け取り目を細めてゆっくりと嚥下した。鼻から抜けるビンテージワインとは違うフルーティな香りを楽しみながら赤ワインを飲み干していく。
ワインのチョイス一つ取っても気取らずあくまでメインのピザを引き立て、それでいて最後まで手を抜かない配慮にコックになれば世界中の人々の胃袋を支配できるのだがとC.C.は思った。だがこの男にとって何事も目的にはなりえない手段に過ぎないのだ。テロリスト行為もゼロの存在自体も日本を奪い返そうと血眼になっているイレブンの頂点に立っていながらそれは決して目的にはなりえないのだ。そして今日の出来事も通過点でしかない。それは自分にとっても同じなのだ…永遠に流れ続ける時の中で季節が変わるように人は人生を終え自分だけただ独り通り過ぎていくだけ、そのような孤独は当たり前で今の生活だけが特異で、それもまた時の中に消える刹那の運命…そんな思考とは裏腹に飄々とした顔つきで空になったグラスをルルーシュに渡す。これまた当然のようにルルーシュは受け取ると澱が入らないように静かに赤ワインをグラスに注いだ。


「お前は何を飲んでるんだ?ただの水か?」
「俺はこれで作った飲み物を飲んでいる」
そう言うと彼はアンゴスチュラ・ビターズと書かれた小瓶を手にした。
ルルーシュ本人が飲んでいるものは自作のトニックウォーター、よく冷えたミネラルウォーターにビタースを数的たらして軽くステアしたもの。一番苦味が強いアンゴスチュラ・ビターズを入れている。それ自体リキュールでアルコールを含んでいるのだがわずかな量しか入れていないため清涼感のある香りと辛口の風味しかしない。
「ハッ、胃でももたれているのか?お子様にはピザもきついらしいな」
300年くらい前から作られていて胃薬として長い間愛飲されていた歴史がある。
C.C.はそこをからかった。
「黙れ。お前と違って俺は未成年だからな、これでいいんだ」
あからさまにムッとした顔をして自分の正統性を述べた。
「普通そこは私に合わせてお前も酒だろう?私一人酔ってもつまらん、お前も飲め」
目の端とほほを染めたC.C.がグラスを揺らしながらクスクスと笑っている。
揺らめく赤が攪拌され更に紅いピジョンブラッド(鳩の血)の輝きになっていき、掌の中で転がされ温もりに内包していた香りが部屋に拡散する。
「お前に合わせる必要などない、俺は俺で作って飲む。お前もおとなしく飲んでろ」
「フン、では私が特別にカクテルを作ってやろうじゃないか?酒は酒飲みにしか美味さがわからないからな」
「飲めなくてもピザに合う食後酒ぐらい俺はわかるぞ」
「そうムキになるな、このワインはいいチョイスだ。だから私からももてなしてやろうじゃないか。冷蔵庫の野菜の下に隠してあるんだろう?」
「あることはあるが、甘い酒は苦手だし度数が高いものは論外だな」
C.C.用に少量のカクテルが用意してあるのだが、甘くない酒となるとジンやウォッカなどきついものしか置いてない。ワインは今日だけのサプライズだった。
「私が飲んでいたワインでもいいから、とにかく一緒に飲めと言っているんだ。だからそれをよこせ」
C.C.は手を伸ばしてルルーシュが持っているボトルを掴もうとした。
だがルルーシュは頑として手を離さない。
「これはお前のワインだ」
「だから、一緒に飲めばいいじゃないか」
「お前のものまで飲もうとは思わない」
「ええい、頑固者が!」
C.C.が奪おうとしたボトルが奪い損ねて互いの手の間でブンっと振り回された。
「あっ」
「しまっ…」

ドンッ
ガシャン

中身をぶちまけながら壁にぶつかったボトルは派手な音を立て床で弾けた。


唖然としていた二人だが、やがてルルーシュは大きなため息をつくと箒とちりとりを持ってきた。
名残惜しそうにC.C.はかがんでボトルだったものを見ていた。
「さわるなよ、指を切ってしまうからな」
「…悪かったな…その、よけいなことをして…」
ギラギラと濡れた破片を見ながら普段とまったく違い大人しく謝罪しているC.C.に怒ってはいないと優しい口調でルルーシュは語りかけた。
「怪我がなければいいさ。俺に飲ませたかったんだろう、また買ってくればいい。…ん?制服にワインが付いてるぞ、シミになるから早く脱げ」
「これか…手っ取り早い方法があるな…ちょっと行ってくる!」
「おい、どこへ行く!まて、外は…外は大雨だぞ…!おい!」
C.C.は全力で走り出し部屋から飛び出していった。
掴み損ねたルルーシュは何かとても大切なものが指からすり抜けていく様な喪失感を感じた。
そんなまさかC.C.を失う理由はないと心に言い聞かせても先ほど見せた彼女の表情が燻る不安を呼び寄せ彼を慄かせたのだ。
「待ってくれ、C.C.!」
ルルーシュも部屋から倉庫を抜け、大雨で大きなノイズを響かせている外へと飛び出した。



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Date:2009/05/11
Comment:4
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Comment

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続き?続きはどうしたんっだ!?
すごく気になるwwww

あ、うちに来てありがとうございますwww
小説…まさかそこまで読んでいる!?とびっくり!!
凄いですよ担さんwww
またお邪魔しますー♪
2009/05/12 【ランゲツ】 URL #-

*

続きはその二のページ作って書くから暫く待ってくださいw
ランゲツさんみたいに早く更新できないよwww

翻訳を使ったりわかる漢字を読んでますよ~
日本語のSS読めるなんてランゲツさん尊敬してます!
你是我的中文的老師!!!
2009/05/12 【担担麺】 URL #NODgJjk. [編集]

*

坦さんこんばんは。
お邪魔します。むむです。
うふふ、ランゲツさんのサイトから発見しましたー!

ああ、続きが・・・! 気になる!
楽しみにしております♪

ではでは。
2009/05/12 【むむ】 URL #-

*

むむさん。こ、こばわー(汗
無事終わらせることができるのかとても不安ですヽ(´Д`;≡;´Д`)丿アワワワワ
ネチネチ細かく描写しなくてもさっさと進めればいいだけなんだけどw
読んでくれてありがとう
むむさんの作品は読んでも感想書いてなくて申し訳ない_| ̄|○
2009/05/12 【担担麺】 URL #NODgJjk. [編集]

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